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黎明の死闘(前編)
テロフォロイを名乗る軍勢。
それを率いるアシエン・ファダニエル。そしてその裏にいるゼノス・・・
塔の出現・・・あれからしばらく経ち、石の家ではアリゼーから光の戦士に吉報が告げられる。
ガレマール帝国へ潜入していたサンクレッドとウリエンジェが帰還したのだという。
「よう、なんとか無事に戻ったぜ・・・」
と疲れ顔のサンクレッド。ウリエンジェは先にアラミゴ王宮へ赴き各国の首脳達に対して情報を共有しに行ったらしい。
ガルマール帝国の帝都ガレマルドはひどい有様であったようだった。
中心部は今や瓦礫の山も同然らしい。
さらに不可解なのは内戦を起こしたネルウァの一味とその息のかかった第三軍団の影が全く見えないこと。
そして崩壊した”魔導城”を幾数の兵士や市民が見張りもないにもかかわらず黙々と改修していた異様な光景・・・
そしてその”改修された魔導城”が魔法的な工夫のされた異形であったこと、とにかく”不気味”な光景であったことは間違いないようであった。
報告も手早に暁は続いてこれらの情報を持ち帰ったウリエンジェに合流するべくアラミゴ王宮へと向かった。
そこにいたのは暁のメンバーの1人であるアレンヴァルドであった。
暁の主要メンバーが倒れ第一世界にいる間、他のメンバーは各地で奮闘していたとクルルから聞いている。
アレンヴァルドもザナラーンやアラミゴ付近の蛮族と蛮神の対応を行っていた1人だ。
彼は「ある任務」のためにラールガーズリーチからここを訪れたという。
アラミゴ人の血を引きながらも帝国民として生まれ育った、そして光の戦士とも戦ったフォルドラ、彼女の力を借りるために
「フォルドラの力が必要な作戦とは、いったい・・・?」
首をかしげるアルフィノであったがアレンヴァルド本人からも本来の用を急かされた様子、暁のメンバーはアラミゴ王宮へと向かった。
かつて掲げられた漆黒の国旗はすっかり紫地に銀のグリフィンがあしらわれた”本来の”ものへと取り替えられ久しい。
そんなアラミゴ王宮には暁のメンバーと、エオルゼア各国の首脳陣が集っていた。
エオルゼア諸国では各国に出現した「塔」に「終末の塔」と名をつけ調査を進めていた。
調査の結果であるが、塔付近まで接近した各国の調査団は”何かの咆哮のようなもの”を聞いた後記憶が無いという。
また、記憶が無いまま味方に襲い掛かりその際には「ガルマール帝国に栄光あれ」と発言したともいう。
症状そのものはテンパードのそれに近い、通常テンパードでは神への信仰心を焚きつけられるのだが今回のケースではガルマール帝国への愛国心が発言したのだった。
さらに報告は続く。
アマルジャ族の誘拐事件はどうやら他部族でも発生しているらしい。
イシュガルドでは誘拐犯を特定、神殿騎士による捕獲とイクサル族の解放まですでに行っていた。
驚くのはその誘拐犯が「帝国性の武器」を所持していたことである。
イシュガルドのアイメリクはここから誘拐事件も塔に何らかの関係があると睨んでいるとのことだった。
塔、そして蛮族の誘拐。二つの点は「帝国」という線で結ばれた。
東方連合のドマも同じ見立てをしており、東西による帝国の挟撃作戦は延期。終末の塔への対応が先決とされたとラウバーンが続ける。
また、この状況を打破するためにアラミゴでは新たな調査員を出すとのことだった。
そこに現れたのは、フォルドラ・・・そして暁のアレンヴァルドであった。
会議は終了し、アラミゴ王宮の前ではアルフィノとアレンヴァルドが会話をしていた。
彼らは塔を調査しに行く、その地はパガルザン。
南ザナラーンに連なる黄金の平原と呼ばれる大地だ。
比較的帝国の監視が少ないとされるこの塔に彼らはたった二人で調査に及ぶというのだ。
アルフィノは今までにない危険な任務に向かうアレンヴァルドが心配の様子であった。
アレンヴァルドはもちろんそれを承知しており、自身の超える力の使いどころであることも自覚していた。
「今ここで動かないでいたら、俺は一生モノの後悔をするだろう・・・」
一方でフォルドラにも思いはあるようで
「知りたいのさ、終末の塔に何が隠されているのか・・・自分が何に加担していたのかを見極めるために・・・」
そんな彼らの言葉を受け止めアルフィノは送り出した。
立ち去り際、アレンヴァルドはフォルドラに対して零す
「世界を救った英雄はもちろん、アルフィノだってすごく強くなっている。
今の俺じゃ到底あいつらには適わない。
けど不釣合ながら暁の一員として英湯になりたいと思ったこともあった。
今の俺はたかが知れてるのもわかってる。だから頼りにさせてもらうさ。
託された思いにこたえるためにも・・・俺だってやってみせる。」
フォルドラの実力を買ってか、あるいは年の近故か、はたまたアラミゴの血がそうさせたのか・・・
アレンヴァルドの弱音とも、決意とも、はたまた感謝とも受け取れる言葉をフォルドラは黙って受け取るのであった。
その後、光の戦士にタタルからリンクシェルで連絡が入る。
「聞いてください、エスティニアンさんが見つかりまっした!」
アシエンファダニエルの操る”ルナ・バハムート”なる獣。
七代天竜の名を借りるかの獣の対策をするべく、かねてよりタタルとクルルによって行われていたドラゴンキラーであるエスティニアンの捜索。
これが早くも結果を得た連絡であった、果たしてどのような手段を使ったのか・・・
しかし、ルナバハムートの名前を聞いたや否や彼は足早にイシュガルドへと旅立ってしまったという。
これを追うべくアルフィノ・アリゼー・ラハ・光の戦士の4人はイシュガルドへと向かうのであった。
イシュガルドにつくやいなや早速捜索を開始するアルフィノと光の戦士。
エスティニアンは放浪の人物。早く探さなければいつイシュガルドを発つかもわからない。
アルフィノの提案でイシュガルドランディングを張りつつ、各方面を捜索し見つからない場合はランディングへ集合することになった。
そして、当てが外れた光の戦士はイシュガルドランディングへ赴くのだが・・・
「やれやれ、暁の金庫番に出会ったかと思えば、この出迎え・・・偶然の再開ってわけじゃ、なさそうだな。」
そこに現れたのは蒼の竜騎士、エスティニアンその人だった。
光の戦士と合うのはかつてゼノスの体を借りたエリディヴスと対峙したとき以来だが、相変わらず飄々とした様子のエスティニアン。
アリゼーをアルフィノと間違えたりと”粗相”をしつつも本人は気にしない様子。
さらには第8星暦では”伝説”とされた蒼の竜騎士その人を目前にして興奮気味のラハは「ほんものだ・・・すげー!!」と落ち着かない様子。
収集のつかない事態に駆け付けたのは丁度イシュガルド上層から戻ってきたアルフィノだった。
竜詩戦争では苦を共に共闘した二人、兄と弟のような関係の二人は久々の再開に談笑するのであった。
そんな「弟」と間違えられた「姉」は少々不満そうではあったが・・・
再会も早々に本題に入るエスティニアン。
彼曰くヒントは「魔大陸」にあるという
「そうか!かの地にはバハムートと深い縁で結ばれた竜が・・・!」
アルフィノもそのワードでピンと来たようだ。
―ティアマット―
そう、魔大陸には七代天竜の一翼が今もその地で黄昏ている。
「なるほど・・・本来の召喚者であるティアマットなら、ルナバハムートについて何かを察知している可能性もある、か・・・」
続けてラハが発言する。
ドラゴン族はその咆哮によって様々なものを交信する。言葉、情報はおろか感情すらもその咆哮に乗せることができるらしい。
イシュガルドの占星術士はその咆哮に共鳴する星を読みドラゴン族の動きを予測すらする。
ともすれば、ルナバハムートの目覚めによってティアマットが何かを察知している可能性がある。というのがエスティニアンの考えであった。
「その調査に同行させてもらっても・・・?」
アルフィノはエスティニアンへ問う
「断る理由は無いが・・・そっちの嬢ちゃんはいいのか?」
目線の先にはふてくされつつも同行の意思を伝える”姉”がいるのであった。
―魔大陸へ移動します―
テンパード治療の調査の際に訪れた魔大陸にこうもすぐに訪れるとは・・・とアリゼーが零す。
ティアマットとの直接対話を行っているのは光の戦士本人と、その様相を監視していたミドガルズオルムの幼体のみだ。
かの竜はかつてアラグ帝国の時代(第三星歴)にバハムートと共にアラグ帝国と戦った。
そしてその結果、愛する翼を失った。
悲しみに包まれたティアマットは失ったバハムートを取り戻すべく”天使い”の甘い言葉に耳を貸す。
その結果がかつて第七霊災を引き起こした”蛮神バハムート”であった。
ティアマットはその罪の意識に苛み、自信の自我の崩壊を防ぐため魔大陸でアラグの拘束具に拘束されながら永遠とも言える時を過ごしているのであった。
竜詩戦争後、ティアマットと対話したエスティニアン曰く「人間を恨む気持ちはとうに枯れはてた」とのことだった。
しかしながら、未だにすべての気持ちを失ったわけではない。
愛する翼を蛮神として召喚してしまったこと。アシエンに利用されたこと。
それらを悔やむ気持ちは今も変わらずあるのだろう・・・
かつてニーズヘッグへ取り込まれたエスティニアンはその兄弟姉妹を愛する感情を我が物として感じ取ったという。
「だからこそ、遺された俺が確かめなくちゃならんだろう。」
そう発言し、彼らは魔大陸のデルタ地区の奥へと進むのだった。
ティアマットは竜氏戦争の時のままそこに佇んでいた。
しかしながらルナバハムートのことは察知していないらしい。
光の戦士の口から今の状況を伝えるとティアマットは驚いたように小さく咆哮くのであった。
どうやらティアマット自体が召喚に利用されたわけではないようだ。
また、ティアマットは召喚が可能な者がいるとすればバハムートを奉るメラシディアの竜であろうとし、それを嘆くのであった。
それと同時にかつて自身の翼を汚したアシエンに対しても怒りを露わにする。
その”張本人”と対峙した光の戦士にとっては神妙な気持ちではあるのだが、エスティニアンはそれに構わずまくし立てる
「それで、ティアマットよ悲しいと嘆いて見せて、それで終いか?メソメソメソメソと俺たちはそんな泣き言を聞きに来たわけじゃあない。
七代天竜として、メラシディアのドラゴンたちの祖として、光竜バハムートの番たる闇竜として何をなさんとするのか、それを確かめにきたんだ!」
喧嘩を吹っ掛けるかの如く言葉をぶつけるエスティニアン。
しかし、彼もまたニーズヘッグの影とならねば竜と会話することすら行わなかっただろう。
強大な力を持つドラゴンと、あくまで対等な立場で言葉を交わす。これが彼の流儀なのだった。
小さき人間からの愚言にティアマットも”この身が自由なら炎熱を以て答えただろうが・・・”と枕詞をつけ続けて答える。
ティアマットの主張は自らが蛮神の召喚者であること、故に再びバハムートと対峙したときにテンパード化するリスクがあることであった。
強大な力を持つ七大天竜が自我を失えば国が一つ消滅するレベルの厄災となるだろう。これではテロフォロイに加担したも同罪だ。
「なるほど・・・バハムートのテンパード・・・でも、それなら解決できるじゃない。」
そう切り出したのはアリゼーであった。
暁は今”テンパードの治療”が行える術がある。
これは水晶公の知識、ラハの記憶、そして暁の協力とアリゼーの思いによって創られた奇跡だ。
「娘よ、それは・・・まことなのか」
思いもよらない言葉に驚きを隠しきれないティアマットに対しアルフィノが続ける
「過去に向き合わなければ前に進めない、貴方が過去を過ちと感じているのであれば今まさにそれを向き合うときが来たのではないですか?」
その言葉にティアマットは首を縦に振った。
今こそ幾数歴の罪の償いをするときが来たのだった。
ティアマットを完全に拘束解除するには「テンパード治療を行うこと」と「拘束具を解除すること」のセットが両方果たされる必要がある。
エーテル遮断する拘束具を外さねば治療は行えないし、拘束具を外したものの治療に失敗というのは何としても避けたい状況だ。
ついては一行二手に分かれ「拘束具の解除方法を調べる」ことと「現在のテンパード化影響を調べる」ことを行うことにした。
テンパード化の影響については博識のあるラハとアリゼーが行ってくれるらしい、光の戦士とアルフィノ、エスティニアンは拘束具の解除方法の調査へ向かう。
調査の中でエスティニアンは光の戦士とアルフィノに対して問う。
それは先の第一世界でアシエンと対話をしようとしたことについてだった。
「今回のファダニエルのような・・・すべての破滅を望む相手とも対話が可能だと思っているのか?」
先のティアマットがあの状態になったのも無論、アラグの・・・さらに紐解けばその裏で手を引いていたエメトセルクのせいであろう。
彼が原初世界で働いてきた所業は到底赦せるものではない。
だが、彼には彼の守りたい世界があった。
だから彼らとは対話もできたし、理解もできた。
しかし、守りたいものが異なっていたために刃を共に構えることとなり・・・片方は反逆者として歴史に刻まれるのだろう。
今はまだファダニエルの思いは分からない。それでも相手の思いを知りたいとも。
そしてわかりあえなくても、覚えていることはできよう。
もちろん戦いだけで済ませられればどれほど簡単なのかは言うまでもないが・・・
エスティニアンは光の戦士の答えに納得した様子だった。
しかし、対話を求めるものは丸腰も同然である。彼は「それは・・・いばらの道だということは覚えておくんだな」と忠告をするのだった。
さて、拘束具の調査結果であるが結果として解除が可能であることがわかった。
ただしマニュアルでの操作が必要そうだ。
この操作をするためアルフィノは艦首島へ残った。
一方テンパード化の影響度も判明したようだった。
グラハ曰く「エーテル量は多いが汚染度が低い」らしい。
複数回の治療を行えばテンパード化解除は理論上可能との答えが出ていた。
拘束具を解除し、治療を始める一行。
するとティアマットはかつての記憶が蘇ってきたという。
光の戦士はそれにさらに問いを重ねる。
かつてのメラシディアのこと・・・アラグ帝国との戦いとのこと・・・
古き記憶によって活性魔法も効率を上げているようだった。
それでも治療は複数回必要、相手は七大天竜なのだ。
アリゼーの魔力は底をつきかけていたが、ラハと光の戦士の助力によって治療は成功する。
拘束具は完全に解かれ、その翼は悠久の時を経て再び空へと舞い上がった。
怒りや憎しみではない、愛するものの偽りの翼を討つために・・・
治療を終えた一行にルナバハムートの目撃証言の情報が入る。
場所はパガルザン。奇しくもアレンヴァルドが向かった目的地であった。
ティアマットとエスティニアンは空を駆け先行してパガルザンへと向かった。
光の戦士と暁もウルダハを経由しパガルザンへと向かうこととする。
ウルダハ・ランディングではすでにパガルザンへの出航準備が整っていた。
不滅隊ではすでにパガルザンへ出兵しアマルジャを支援しているという。
これはウルダハ王宮のナナモ・ウル・ナモとそれに賛同した不滅隊体調ピピン、そして砂蠍衆ロロリトの協力があってのことであった。
そして、先行隊の情報によればルナバハムートはテンパードを新たに作り出すことは行わないらしい。
これはエオルゼア連合にとっては朗報であった。
蛮神に対して超える力を持たない者でも対応できる。
・・・もっともその実力があれば、の話ではあるが。
しかし、いくらエオルゼア連合軍が出兵を進めていると言えど相手はあの「バハムート」であることには違いない。
エオルゼアを、そしてアマルジャ族を助けるために光の戦士は黄金平原パガルザンへと向かうのであった・・・
―黄金平原パガルザンを攻略します―
パガルザンではテンパードと化したメラシディアのドラゴンと帝国の軍勢がいた。
もちろんエオルゼア連合軍も負けてはいない、アマルジャ族の反抗もあり五分五分の勢力といったところだった。
光の戦士は塔を目指す、道中合流したティアマットとエスティニアンの助力もありルナバハムートの討伐に成功したのだった。
黄金平原を照らす黄昏にティアマットの翼が輝く。
長きに渡る拘束を抜け、人に対する憎しみのためではなくハイデリンのため、愛する翼を討つため、空を駆けたのだった。
ティアマットは暁の一行に感謝をし、空へと消えていった。
アマルジャ族の長も此度の戦において人に対する感謝を持っていた。
行方不明事件の犯人は帝国の息のかかったものと分かり疑いは晴れ、アマルジャ族も共通の敵に対して共に戦ってくれることを誓ってくれたのだった。
アマルジャ族ともついに手を取り合えるかもしれない。
かつてエオルゼアを一つにする目標を掲げたアルフィノにとってもこれは希望であるはずだったが、今の彼は一人の友人の安否を心配しているのだった。
友の居るであろう終末の塔は美しい茜色の空に反するように禍々しく輝いていた。
―数時間前 パガルザン遠方 週末の塔内部―
そこにはアラミゴから調査に向かったアレンヴァルドとフォルドラがいた。
塔の中は奇妙な光景だった。
全体的に見ると塔は機械的にも見えるし、生態的にも見える。
生物の骨髄のような部品は柱を構成し、その壁面はまるで何か巨大な生物の鱗のようにも見えた。
床は臓器のようにな文様が禍々しく、それでいて未来的な機械が壁に向かって鎮座している。
しかし、そんな”ささい”な奇妙さはすぐにどうでもよくなった。
壁だ、塔の内部には行方不明となったアマルジャ族達が壁に埋め込まれていた。
意識は無く俯いて”壁の一部”となっている。それは地獄とも呼べる形相であった。
「な、なんだよ、これ・・・・」
アレンヴァルドは思わず口から声が出る。
フォルドラも冷静を保っているように見えるが内心穏やかではないだろう。
アレンヴァルドは居ても立っても居られず、アマルジャ族を壁から引き抜こうとする。
すると突如、意識が無かったはずのアマルジャ族の目が赤く光り、咆哮しはじめた。
刹那、俯いてしまったが今度は息が無い。
「嘘だろ・・・し、死んじまったのか・・・?」
アレンヴァルドは動揺を隠せない。
すると、まるで共鳴するように周りのアマルジャ族も動き始めたではないか。
咆哮ともに何か電気のようなものを帯びるアマルジャ族。これはただ事ではない何かが起きる。
フォルドラはそう思っただろうか、次の瞬間には”さっきまでいなかったもの”が発現していた。
蛮神イフリート、いやルナバハムートに準えるのであれば”ルナイフリート”と呼ぶのが正しいのだろうか。
焔のイフリートとは形こそ似ているものの艶やかな外装に紫の角は禍々しく、それとは別物であるということがすぐに解った。
唐突な敵襲に二人の対応が遅れる。
アレンヴァルドは思わずルナイフリートと対峙していた。
「護るんだ!俺だって・・・俺だってえ!!」
・・・・
―一方 ウルダハ―
パガルザンから帰還した暁の一行の前にナナモ・ウル・ナモが直々に表れた。
しかし、その様子は謝辞というわけではなさそうだ。
「先ほど帰還したピピンより報告が・・・撤収の際に負傷したアレンヴァルドを抱えたフォルドラを発見し、保護したと!」
その瞬間にアルフィノの表情が強張る
「陛下、御自らのご伝達感謝の言葉もありません・・・申し訳ありませんが・・・失礼いたします!」
アルフィノはフロンデール薬学院へ駆け出す。
サンクレッドは落ち着いた様子でナナモ陛下へ容態を伺う。
帰還後すぐに薬学院へ担ぎ込まれたらしく、詳しい容態までは把握していない様子であったが医師曰く「一刻を争う」らしい。
アリゼーは不安そうな表情をしつつ、「全員で行っても邪魔になるだけ」と気を利かせエスティニアンと光の戦士のみがアルフィノを追う事となった。
フロンデール薬学院の前では珍しくも熱情的になったアルフィノがなんとか容態を聞けないかと訴えていた。
彼を落ち着かせ、冷静さを取り戻すと同じく門前に立っていたフォルドラへ礼を述べる。
今回の件では彼女がいなければアレンヴァルドは生きて帰るどころか死体も無かっただろう。
「私もそばにいられたら、彼は・・・」
アルフィノがそう言いかけるとフォルドラは激昂する。
「おい、思い上がるなよ。お前が・・・いや、たとえそこの英雄がいたところで、すべての命が救えるわけじゃない!」
人はいずれ死ぬ、それが戦場であればなおさらだ。
アラミゴと帝国の戦争で幾人のも仲間を見送った彼女からすれば、アレンヴァルド一人に対して感傷的になるアルフィノは滑稽にも見えただろうか。
「救う相手を選ぶことさえできないと・・・その甘さに、いつか自分も殺されるぞ」
彼女なりの叱咤だっただろうか。
塔の内部を見てきた彼女はこれから起きる惨劇の序章を垣間知ったのだろうか。その言葉は厳しいものであったことは間違いない。
「甘い・・・か。」
それを見ていたエスティニアンが不意に口を開く
彼はこう続ける
「同感ではあるが、厳しさは俺やお前のような人間が持っていりゃあいいと思うのさ。
叶うともしれないバカみたいな理想を、それでも最後まで突き通せる奴こそが”英雄”と呼ばれるんじゃないか?
皆が英雄になれるわけじゃない。このままじゃ、あいつらはいつか全滅するぞ。
まぁ、そう簡単に、消してしまうつもりはないさ」
エスティニアンは竜詩戦争を
フォルドラはアラミゴと帝国の戦いを戦い抜いてきた。
無論暁も幾人の仲間を失ってきた。
それでも第一世界へ転移した仲間を一人も失うどころか、”本来救えなかった命”までも原初世界へ帰還できたことは奇跡ともいうべきだろう。
この戦いがこれからどのように進むのか、それは誰にも分らない。
見計らったようにアルフィノと光の戦士へ伝令が来た。
どうやらナナモ陛下がお待ちらしい。
二人は急ぎウルダハ王政庁へと向かった。
―ウルダハ王政庁―
室内ではナナモ・ウル・ナモが待っていた。
また、サンクレッドやウリエンジェ、ヤ・シュトラ、グ・ラハを含めた暁の面々も集合していた。
塔を調査していたフォルドラとアレンヴァルドが持ち帰った情報の共有。
それが趣旨であるらしい。
まず、塔の内部ではイフリートの形相をした獣が現れたという。
バハムートに続く”ルナイフリート”の確認であった。
また、塔は何らかの蛮神召喚を行う装置であるとはウリエンジェの見解だ。
さらに、全国各地の塔からもルナバハムートほどではないものの、強大な力を持つ蛮神が召喚されたという。
これに対してエオルゼア連合では軍を出兵させ全力で対応にあたっているとのことだった。
一方で吉報もあった。
ウルダハは早々にアマルジャ族との交渉を再開し、協力関係を築ける土台が固まりつつあるらしい。
報告を受けた暁一行は石の家へと戻ることになった。
「今いなくなると消えちまいそうなんでな・・・」
アルフィノを気にしてだろうか、エスティニアンも石の家へ同行してくれるようだった。
―石の家へ移動します―
石の家ではクルルが一行を待っていた。
クルルは何やら物々しい形相で口を開く
「私は、知の都シャーレアンに、調査協力を出すべきだと思うの」
この事態にクルルはエオルゼアの北洋にある知の都シャーレアンへ協力を要請するらしい。
クルルはバルデシオン委員会の長であるガラフの養子、バルデシオン委員会自体はアシエンラハブレアのアルテマによって消滅させられてしまったがその発言力は多少なりとも役に立つのではという算段だった。
すでにエオルゼア連合からは許可を得てクルル自身が使者としてシャーレアンへ向かう算段も取っているらしい。
また、クルルは第一世界での暁の活動報告を聞いたところ「光の加護」について疑問が浮かんだらしい。
というのはハイデリンからの干渉についてだ。
確か最後にハイデリンから呼びかけを受けたのは竜詩戦争の時。
ミドガルズオルムの竜の爪による呪いを解除したタイミングだった。あれからかなり時間がたっている。
クルルはこれが「力を与えながら導くのをやめてしまったのか」はたまた「導けなくなってしまったのか」
この疑問を説くためにかつて逆さの塔で星の海を研究してきたシャーレアンへ赴くのも一つの目的らしい。
そう報告をすると彼女は早速シャーレアンへと旅立っていった。
・・・
・・・・・
一方ガルマール帝国 帝都ガレマルド
幾数もの武器が雑に床に突き付けられている。
これの中には優れた銘のものもあっただろう。
これらの武器を手にとっては戻すのはゼノス・イェー・ガルヴァスその人であった。
「おやおや、お気に召しませんで?それとも・・・ドラゴン族という手駒を失った、愚かな私への警告でしょうか?」
そう割り込むのはアシエンファダニエルであった。
ゼノスは淡々と話を進める。
「ずいぶんと”無駄遣い”をしたようだが・・・計画に滞りは生じまいな?」
これに対してファダニエルは余裕綽々で「不要なゴミを始末しただけですよ」と答える。
杭のためにドラゴン族を養護することも難しいと続けた。
「それより陛下も・・・アレの制御は、くれぐれも頼みますよ?」
ファダニエルは自身への言葉の”あてつけ”かのようにゼノスに注意を促す。
ゼノスは鼻で笑うように「抜かりない」と答えた。
しかし、ゼノスの注意は言葉そのものではなく、目の前の得物へと向いていただろう。
彼はそれを手に取った。
「これはこれは、ずいぶんと古めかしい・・・しかし、私たちの望みに似合いの得物じゃあ、ありませんか!」
気に入った得物があったことに喜んだか、はたまたこの皮肉めいたセリフを吐けることに喜びを感じたが
ファダニエルの口調はいつもにまして饒舌だ。
帝都ガレマルド、魔導城にてゼノスの一閃が空を引き裂く音が鳴った。
つづく
つづき
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