最近話題のバーチャルユーチューバー。
いろいろな”バーチャルなユーチューバー”が新しい何かとして出てきています。
すでに「なぜ流行ったのか」という部分では多くの方が評価していますが、どうにも「海外から火が付いた」という記事が多かったので
日本のオタク的にどうして受け入れられたのか、という部分について「ゲーム実況配信」という視点からフォーカスを当てて記述してみました。
※当記事はあくまで仮説です。データを基とした裏付け等はありませんのでご了承ください。
データをお持ちの方、研究機関等でこの題材で研究を行ってくださる方、是非ご教授願います。
まずは前提から整理していきたいと思います。
◆そもそもYoutuberってなんだろうか
実はYoutuberは思ってるよりも定義がしっかりしてます。
Wikipediaで申し訳ないですが割と上手にまとまって、かつ定義されている職業だと思っています。(少なくとも「エンジニア」よりはしっかりしてます)
平たく言えば「Youtubeで動画を作成・公開しかつ『生計を立てている人』」ということになります。
そういう意味で言うと、収益の無い(クリエイター奨励プログラムで0ではないですが)日本でいうところの「ニコ生主」(生計を立てているかは問わない)とは大きな乖離があります。
以下は乖離の発生について簡単な流れを記載します。
Youtubeで個人が生計を立てられるようになったのは動画広告が導入されてから。
つまるところ2006年にGoogleがYoutubeを買収してからとなります。
同時期、ニコニコ動画は絶頂期でした。サブカルチャー系はニコニコ動画が活性化していたため
日本のサブカルチャー界隈と海外ではこの時からすでに乖離があったといえます。
ただし、日本全体がYoutubeから離れていたかというとそうでなく、
日本の神奈川県からMEGWIN氏が2005年からYoutubeに動画を投稿しています。
日本はおろか世界的にも先駆者といえそうです。
さらに現在日本国内では最も有名といえるであろうヒカキン氏は2007年の9月に活動を開始しています。
詳しくはこちらがわかりやすいと思います。
◆じゃぁ「バーチャルって?」
キズナアイ氏を筆頭としたバーチャルユーチューバーが「生計を立ててる」レベルのYoutuberであることは間違いないでしょう。
まず「Youtuber」の定義としては間違ってなさそうです。
それでは次は「バーチャル」ってなんなんでしょう?
【virtualとは】
そもそものワードの意味合いとしては「事実的な」という意味になります。
ただし、エンジニアの方々には「仮想マシン」(VM:virtual machine)というワードや「仮想回線」(VC:virtual circuit)といったワードから「仮想」という意味でなじみの深い単語なのではないでしょうか。
余談ですが、これはもともとIBMがコンピュータメモリ上でコンピュータを事実のように再現した=Virtual Machine(事実のようにふるまうコンピュータ)というところから
Virtual=仮想となったといわれています。
一般的にはやはり仮想現実(VR:virtual reality)がこの単語を普及させた理由になるのではないでしょうか。
◆では、バーチャルYoutuberとは?
もともとはキズナアイ氏が自信をそう呼称したことによります。※
そういった意味で、キズナアイ氏がムーブメントの火付け役というのは間違いなさそうですが、見栄え的な実現としては2011年時点でAmi Yamatoが実現をしています。
画像1:バーチャルユーチューバー誕生の瞬間だと思われるワード
A.I.Channel 「【自己紹介】はじめまして!キズナアイですლ(´ڡ`ლ)」より
自身のキャラクター(電子世界の住民である、AIである)とキャッチーなVirtualというワードを組み合わせたのは非常に才であったとおもいます。
それは「バーチャル」というワードがまだ一般的に曖昧かつ、文化的な類似項(動画閲覧者が入りやすい基盤があった)が過去に多く存在したことにあると思います。
また、その文化の類似項で用いられている技術が技術的なレイヤーで見るとそれぞれ別々のものだったため、新規の技術であると錯覚させつつムーブメントを引き出せたと感じています。
以下に見解を書いていきます。
(以下よりバーチャルYoutuberをニコニコ動画内タグに倣って”vtuber”と記載します。)
【技術的見解】
vtuberは以下の技術を用いて作られています。
・3Dモデルとモーションキャプチャ
・人によるCV
・上記によるYoutuber的映像制作
文化的な見解は下記です。多分こっちのがでかい
【文化的見解】
・2次元キャラクターによるゲーム実況配信(Voiceroid/ゆっくり実況) [ニコニコ]
・有名配信者によるゲーム実況配信 [ニコニコ動画]
・Youtubeライズされたゲーム実況配信 [Youtube]
ここで重要なのはvtuberは文化的には「ニコニコ動画的なカルチャー」でありながら映像の見栄えや行っていることは「Youtube的なカルチャー」であることにあります。
と、ここでようやく今回のお題目の「なぜオタクにvtuberが受け入れられたのか」という話に戻ります。
とはいうものの、旧来よりニコニコ動画を中心としたオタクコミュニケーションではYoutube形式で作られた動画はカルチャー的にヒットした記憶がないからです。
そもそも、ニコニコ動画ではかつて「人の生声のついた映像」は懸念される嫌いがありました。
また、映像作成側も5chが2chで、かつ勢力があった時代の名残か個人の匿名性を保つコンテンツ制作をしていたように感じます。
そのためゆっくり実況が文化として定着し、キャラクターライセンス的な云々を踏まえたうえで、その一つの発展形としてVoiceroid実況が流行したのだと思います。
画像2:ゆっくり実況プレイの映像
ハニワさん 「バイオハザード4 HD ゆっくり実況プレイpart2」より
画像3:Voiceroid実況プレイの映像
たらちゃん(英国面)さん「【Besiege】英国面に堕ちた茜ちゃんのパンジャンドラム縛り⑨VOICEROID実況」より
しかし、「生放送」という部分においてはそれら人工音声を用いた映像は技術的に実現が難しく、生声による配信がメインとなっていました。
日本国内でもUstreamやニコニコ生放送の大権により生放送文化が根付いたのもここらへんだったと思います。
また、そこから有名歌い手によるゲーム配信参加や、ゲーム実況配信自体のプロ化が進んでいきました。
その後、「自身の顔をカメラに映して配信を行う」形式が増えてきます。
日本国内のYoutuberも行っている現在の主流の方式だと思います。
画像4:Youtuberが用いるゲーム実況プレイ映像
Hikakin Games「ヒカキンのスーパーマリオオデッセイ実況 Part4【湖】」より
単純な時代の流れによる世代交代や、流行もあると思います。(特にヒカキン氏は多方面から絶大な支持を得ていると思いますし)
しかし、vtuberがコンテンツとしてここまで受け入れられたのはなぜか、考えてみました。
ここで一旦整理を行います。
画像5:合成音声による実況と生声による実況の比較
この整理で見るとニコニコ動画で見るゲーム実況配信は大きく二つの需要に分かれたといえます。
いくつか評価項目はありますが、平たく言うと「2次元コンテンツ」か「3次元コンテンツ」かという部分です。
アニメが好きな人が好むか、ドラマが好きな人が好むかの違いです。
(そういう文献どっかにないですかねー)
それではvtuberではどうでしょうか
画像6:画像5にvtuberの定義を当てはめた図
この形式は言ってしまえば「3次元の人間が2次元キャラクターの着ぐるみを着つつゲーム実況配信をしている」構図となります。
しかし、着ぐるみは3Dモデルとモーションキャプチャを利用することでテクノロジーを用いてそれを解決しているということになります。
カメラ映像も三次元的要素は映す必要がないのでバーチャルと銘打つのもある種納得でしょう。
上記の表から見るとvtuberは上記2つの需要を総取りできる構図となります。
また映像の見栄えは「Youtuberによるゲーム配信映像」より「Voiceroidによるゲーム配信実況」に近いことがわかります。
画像7:vtuberによるゲーム実況プレイ映像
A.I.Channel「【BIOHAZARD 7 resident evil】#18 そして、時は繰り返されるのであ」より
もし、ここまで計画してvtuberを作ったのであれば非常に業界を研究していると思います。
◆つまるところ結論
「日本のオタクが足を踏み込みづらい領域に対して、既存の文化と技術をうまく合流させて新しい文化を作った」
というところでしょうか。
さらにいうとこれは「いままで狙えなかったターゲットの集合を狙える」方法であるとも言えるのではないでしょうか。
◆vtuberの今後
おそらく、今後バーチャルyoutuberは増加していくでしょう。
2DLiveとFacerigを組み合わせて使う方法や、iPhoneXのフェイストラッキングを用いた大衆向けのアプリケーションも出てきているようです。
技術がコストダウン、大衆化すればよりいっそう増えると思われます。
それは上記に挙げた通り、一部のターゲットに対しては既存の方法よりも集客を見込めるからです。
また、現在TOPを走っているvtuber陣ですが、彼ら(彼女ら)はより活動の範囲を広げてくると思います。
キャラクターとしてはCVがいる分、アニメキャラに近い彼女らですが、文化圏的にはVoiceroidやVocaroidに属性が近いと思っています。
現在の技術があれば2次元空間のキャラすら現実に召喚できるわけですし、リアル空間でのライブを行うことも難しくはないでしょう。
私はvtuberに対して新しい文化の特異点を感じています。
今後も陰ながら応援したい所存です。
◆参考リンク
要件を言おうか「バーチャルユーチューバーって何?キズナアイ誕生から読み解くバーチャルユーチューバ―の秘密」