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「これはファイアーエムブレムなのか」FEエンゲージクリアしたネタバレあり感想

やっとクリアしました。

ということでようやく感想がかけるので書きます。

まず最初に、巷では賛否両論となっている今作ですが個人的にはかなり好きでした。
今回は「ファイアーエムブレムらしさ」を主題としながら感想を上げていこうと思います。

総評:新たなるファイアーエムブレムのリブート作品

恐らく歴代シリーズやってる人は知っている、ファイアーエムブレムには「世代」が存在する。
人によって細分化されたり、微妙に位置が違ったりするのだけど、個人的には「ファイアーエムブレム覚醒以前・以後」というのが大きな境目だと思っている。
今ではスマブラでも大量のキャラが参戦し、海外ともに人気シリーズにのし上がったファイアーエムブレム。
しかし、10年前は任天堂ソフトの中でも比較的マイナーソフトだった。
これを一気に「キャラゲー/声優ゲー」という人気ソフトへ押し上げたのが2012年発売の3DS用ソフト「ファイアーエムブレム覚醒」だと認識している。
声優が比較的前面に押し出され、キャラデザも若者に人気のデザイナーを起用。
ストーリーも従来の戦記物からキャッチ―なものへとシフトした。

そこからさらに10年。If/風花雪月ときて、ファイアーエムブレムエンゲージは、「さらなるリブート」をかける作品だと認識した。

手ごわいシミュレーションと手ごろなシミュレーションの両立を果たしたシステム

ファイアーエムブレムは多くの人が知るテーマソングがある。
そのテーマは昔のCMで歌詞がついており「ファイアーエムブレム♪てーごわいシミュレーション♪」という歌い出し。
ファイアーエムブレム「らしさ」の一つに”手ごわいシミュレーション”というのは切っても切り離せない要素となっている。

今作は近年発売された中でも難易度は高い作品だと思った。
新要素である「紋章士」は使用したターンから数ターン、特殊な能力とステータス上昇が行われる特殊コマンド。
設定的には「過去の主人公キャラと一時的に合体して強化する」というもの。
使用するとユニットの見た目も変更され、初心者が見ても「強い」が解るようになっている。
SRPGは「何が強いのか分からない」「どうすればいいのかわからない」と解らないことが多いと、それに乗じて難易度が上がっていくため見た目の上での「強い」がこうした形で提示されるのは解りやすくて良い。

ただゲームの難易度的にはこの要素が割と前提となっているため、素の状態でクリアしようとすると難しい。といった具合だ。
しかし、安心してほしい。今作のファイアーエムブレムエンゲージはなんと「死んだらやり直し」ではなく、「死んだらそのユニットを動かした時点まで巻き戻せる」機能がついている。(ぜんさk)
いわば「どこでもセーブ」、公式によるチート機能だ。
ユニットが負けてもその前のターン、キャラを動かす前まで時を戻せばいい。
また、この仕組みも「竜の時水晶」というアイテムで使える”設定”に組み込まれており、作中あるシーンではこれが封じられてしまいその章では時が戻せないなど難易度調整に貢献されている。

もちろん覚醒以降の設定難易度である「カジュアル・クラシック」、過去作品同様「ノーマル・ハード・ルナティック」も用意されているので、これらの組み合わせと縛りの内容で難易度の可変がかなり柔軟に行えると感じた。

◆死んだ仲間は
・撤退して次の章で復活する=カジュアル
・戻ってこない=クラシック

◆基本的な難易度は
・ふつう=ノーマル
・むずかしい=ハード
・理不尽=ルナティック

◆そのほか難易度を調整するための縛り
・竜の時水晶あり/なし(時間を戻せるか)
・遭遇戦あり/なし(レベル上げできるか)
・紋章士あり(パワーアップアイテムの有無)

これらを組み合わせて自分の好きなように遊べるのが非常に良い。
自分は今回クラシック&ノーマルで時水晶は使うけど紋章士はなるべく使わない感じでやってました。
これでもまぁまぁ難しい(時水晶使ってもダメで2章くらいやり直した)

 

今作は「覚醒」と同じシステムで、クラスチェンジし放題、レベルは実質無限(LvMAXになった後ステータスを下げずにLv1に戻せる)。
武器強化ありなどなど要素が多くて複雑なのだけど、これらを説明してくれる自然なチュートリアルと紋章士によって「これすると強いよ!」が提示されていること、複雑な要素を割とUIがいい感じにまとめてくれている点も高い評価をしたい。

賛否両論の物語:これって外伝?お祭りゲー?

まず、巷でよく見る「シナリオが薄い」という部分。
正直歴代作品見てもなんでや!ファイアーエムブレム毎回シナリオは毎回薄味やろ!というところ感想なのだが、今作はプレイしてて何かすごい「なつかしさ」を感じた。感覚で言うとGBA世代のFEをやっているような・・・

なんでだろう?とふと疑問に思ったので落ち着いて考えてみることにした。

テキスト量と「FEらしさ」

FEのストーリーは過去作品でも割と薄味、というのは多分テキスト量の問題なのだと思う。
実際にテキスト量を数えるべきなのだろうけど、他社RPG作品のファイナルファンタジーやドラゴンクエスト。
任天堂だとゼノブレイドあたりと比べてもテキストとセリフの数は明らかに少ないと感じる。
ただ、これは「1ゲーム」の中でセリフがほとんど発生しないSRPGの特性上仕方のない事だと思う。
ゲームシステム上、盤面で将棋を指す前後にしかストーリーを差し込めないのだ。

さらに、SRPGは1回のゲームが長い。他のRPGが「ダンジョンに潜ってボスを倒す」という過程の中で何十回と戦い、ストーリーを勧めるのに対してSRPGは1ゲームしか展開できない。
そこでファイアーエムブレムではかねてより旧作品では「戦記物」という形をとっていたように思える。

戦記物の何が有利かというと「主人公たちは見えていない部分の演出が容易」ということだ。
伝聞ベースで話が伝わる為「○○王国が隣国に侵攻した」の一言でスケールの大きな話を簡単にテキスト1文のみで可能になる。
これに合わせて、ミクロ的な演出は主人公目線で掘り下げれば良いわけだ。

これに変化があったのが「覚醒」だ。
王国、大陸など歴代シリーズの要素は出てくるものの、基本的には主人公であるクロムとルフレの主観がメインで物語が進行していく。
ただ、上記のような制約上他のRPGと比べて全体的な筋は通してあるものの、キャラの背景や状況の掘り下げなどは最低限で済ませてあり、場合によっては支援会話でこれを行うなどの工夫がされている。
つまるところ、支援会話も視ずにストーリーだけど進めるとかなり「薄味」感が出るわけだ。

一方で風花雪月は上記のSRPGの弱点を払拭するべく、学園パートを増やし掘り下げの時間を純増した形だ。
ただ結果として全ルート回収までのプレイ時間が100時間をゆうに超える形になってしまっている。

今作のエンゲージがどちらになるかというと間違いなく前者。
さらにいうと覚醒よりも展開が早く、より薄味感が出てしまっている。
ただ、歴代FEシリーズをやってる身からするとこの展開の速さは割と心地よく「そうそう、FEってこんな感じだよな」となる。
これがなつかしさの正体だと感じた。

主題と「FEらしさ」

FEらしさという部分にもう少し目を向ける。
尚エンゲージのストーリー的なネタバレはここからだ。

物語の上でのFEらしさは何か、と言われると上述の通りで旧作品のファンからは「戦記物」となりがちだが本質は違う。
FEの物語の本質は「仲間との戦いと主人公の成長」だと思う。
システムが特殊な風花雪月や、外伝作品である異界異聞録FEも含め、どの作品においてもFEでは「仲間が増えていき、その仲間との関り(支援システム)とそれによるエンディング(クリア後の来歴)の変化=主人公の成長」という形態は崩していない。
エンゲージはこの「FEシリーズの主題」を「本作の主題」として大々的に行った作品だと言える。

この物語の構造は非常に簡単だ。「仲間と成長して勝つ」物語であればいい。
しかし、同時にこれを主題にしたまま描き切るのは難しいと思う。
何故かというと緻密な世界設定や余計な掘り下げを入れてしまうと、物語の主題がそちらに持っていかれてしまうのである。
そもそも、「仲間との成長」は物語の上でのエッセンスだ。
これを主題としてつかうという行為は、いわばあらゆる媒体で見ることができる汎用的なプロットすべてに対して「既視感」が産まれてしまう。

今回これに対してエンゲージではあえてストーリー展開と全体の空気感を「幼稚」にしてきたと感じた。
幼稚というと悪い言い方だが、よく言うと「誰でもわかるわかりやすさ」、絵本の面白さといえばいいだろうか。
物語の本筋は御伽噺レベルの内容でまとまっており、「主人公であるリュールが仲間と共に悪の存在を討伐す物語」と簡単に説明がつく。
ただ、表現したいことは本質である「仲間との成長(作中では”絆”という表現)」だ。
これは「カメを助けた恩返しに竜宮城に行き、帰ってきたら老人となってしまった浦島太郎」の本質であるところの「楽しい時間はすぐに過ぎてしまう」と同様の手法と言えるだろう。

ただ、現代的な表現ももちろん抑えてああって、10章ごとに大きく展開と目標が変化する「序破急」の3部構成を手本のように守った上で、各章の最後には演出面で盛り上げる所謂「魅せ」もしっかりと行われている。
これについては「先が読みやすい」という意見も散見されるが、個人的には「こうなるだろうけど、どういう演出で実現するんだ?」という興味が勝ってしまった。
「お約束をお約束として楽しむ」ことが出来れば楽しめるが、「展開に裏切られる」ことを期待するプレイヤーに対しては退屈してしまう部分であることは否めないと言える。

また、巷で「特撮物っぽい」と言われてるのは言い得て妙で、上述のシステムである歴代キャラとの融合「エンゲージ」も特撮の変身要素的であるし、テキスト量の少なさ=シンプルさもこれに拍車をかけているように思える。
何より「特撮のプロットに乗っけてしまえば先述の既視感」をオマージュという形で回避できるし勧善懲悪との相性も良い。

ちなみに今作をプレイするに当たり、自分は発売の1週間後にプレイを開始した。
歴代作品をプレイしたkauma氏からは事前に総評を聞いており彼の総評は「IFよりマシ、ストーリーは頭からっぽなら楽しめる。システムは最高傑作」という評価を与えられていた。
IFの話はもうここではしたくないのでしないが、いざ購入して起動。
OPムービーと楽曲を聞いて思わず「だっせぇwww」と口から声が出てしまった。

だってサビ前に掛け声が入るんですよ「エンブレム・エンゲージィ!!!」って。

けれども、それと同時にこの作品がやりたいことが概ね理解できたのも事実。
「あぁ、これは風花雪月とは違って完全に娯楽作品なんだ」と。
巷だとこれのせいで「お祭り作品(マリオでいうところのマリパ的扱い)」扱いされてるのが悲しい所ですが・・・

とまぁ、エンゲージは全編通して「小二的かっこいい激アツ展開」が要所で用意されているのも良い。
荒を探せば無限に埃が出てくるのだけど、それを気にさせない「こまけぇことはいいんだよ!」と言わんばかりの「ノリと勢いの激アツ展開」
「フラグは立てたら3分以内に回収!」というスピード展開も上記の解りやすさを優先したものと考えれば非常に納得がいく。
まさか起動時にクッソダサいと思ってたOPがクリア後に激アツテーマソングになるとは思ってなかったぞ・・・

閑話休題。

と、いうところでこの物語は作中の背景やキャラごとの掘り下げがほとんどメインストーリー中に行われない。
メインストーリーのテキストはなるべく簡潔で無ければ「仲間と成長して勝つ」物語がブレてしまうからだ。

代わりに戦闘終了後のマップ探索の会話や支援会話。仲間手帳などでキャラクター毎の掘り下げはちゃんと行われている。
なんなら1キャラクター当たりDLC込で14人分の紋章士との会話があり、そちらの方が短いものの掘り下げはされているかもしれない。
ちゃんとプレイした?(威圧

歴代作品による物語の補強

次に、旧作品ファンに対するおもてなしはしっかりしているという部分を話したい。

まず、過去12作品の主要キャラクターのゲスト参戦。
覚醒以降当たり前のように出ていた「異界の○○」という要素について本作ではやっと本質的に触れられた。
FE作品は加賀さんがデザインした新暗黒竜~トラキアまでは同世界であるものの時間軸が全く別。
それ以降の作品は同じ舞台だったり、そうじゃなかったり、平行世界をにおわせたりだったりとしたわけだが、どうやら「異界」という要素で相互に干渉しあえるらしい。
よく考えたらヒーローズとかもなんか平然とやってるし、そういうものなのだろう。

○○の世界が無限に展開されていて、今作のエンゲージは13番目の世界ということになる。
これは作中でも触れられており、間違いなくエンゲージはお祭り外伝作品ではなく、FEの正当新作と言えるだろう。
完全に仮面ライダーディケイドのそれだ。

さて、先ほどは「下手に物語を深堀するとそっちが主題になってしまう」と記載したが、エンゲージでは「他FE作品に対する掘り下げ」のみは行っている。
FEの本質が「仲間との成長物語」なのだから、それを描いた他作品の掘り下げは許されているわけだ。
メインストーリーを辿ってもマルスから始まり、外伝、聖戦の系譜、トラキア776、封印の剣と歴代キャラの指輪を集め前半が終了。
そして中盤でこれらが全て的に奪われてしまい、残ったのが「烈火の剣」のリンと「覚醒」のルキナ。
この2キャラは「海外で初めて発売したFE」である烈火の剣と「新時代のFEのリブート作品」となる覚醒のゲストキャラであり、このタイミングで「あぁ~ここから新章ってわけね!」と歴代ファンが納得できる組み合わせであったりする。

そして再び奪われた指輪を取り戻していく。
この中では敵キャラの掘り下げも行われていく。仲間にできないキャラクターはストーリーで掘り下げるしかないからね、仕方ないね。
と思いつつも、いっそ「敵だけなんで掘り下げあるんだよ!」とレビューが付くくらいなら、徹底的に敵の内情は無視してもよかったんじゃという気持ちも無くも無かったり・・・掘り下げが無いって言ってる人は早くリュールと仲間の支援A見て。

1日経って「そういえば」と思ったので追記。
FEの敵キャラは基本的に「何か理由があって戦っている」ものがほとんどだ。
初代のメディウスは「人に裏切られた」ことが理由で、司祭ガーネフを手駒に世界を乱戦へと導く。
強いていうなら”覚醒”のギムレーがそれっぽい理由が無いが、司祭ファウダーを手駒に世界を滅ぼすべく暗躍する。
FEのラスボスは「誰かを手駒に」「何かしらの理由をもって」主人公に立ちはだかるのだが、今作ではこれがソンブルと四句という構図になっていることに気が付いた。
ラスボスの最後の「戦う理由」についてはFEであることを守るためには必要だったのかもしれない。
四句についてはモーヴとマロン、グリとセピアで「どちらに付くか」の分かれ目が描かれている。
結局のところ、自軍サイドに来なかったグリとセピアも「敵側は敵側で絆があった」という描写だと思ったので必要なカットだったと思いたい。(主題が勧善懲悪なので若干の相性の悪さは感じられずにはいらないが・・・)

そして驚いたのがラスボスと戦う際の「零番目の紋章士」の存在だ。
これは恐らくマルスの出演する作品「暗黒竜と光の剣」に出てくる「アンリ」だろう。
アンリは作中でも「かつて1人で世界を救いこの国を興した」人物として伝承のみが残っている存在だ。
物語としても背景の1つでしかなく深くは触れられない。
強いていうならマルスが「僕はアンリのように1人で世界は救えない、けど代わりに僕には仲間がいる!」といったセリフで触れるのみだ。
”暗黒竜”ではこれらのセリフから、アンリが「個の英雄」、マルスが「群の英雄」という対比になっている。

あ!!

なるほどな~、そうやって過去作品引用してエンゲージの主題を補強するわけですか、かしこいなぁ

 

正直、終章を始める迄「エンゲージ君の主題、本当にこれでいいの!?ニチアサ小学生向けのストーリーなの??」とすら思っていたのだが、最後の最後に「零番目の紋章士」の話をされた瞬間にピンときたといった具合だ。
あぁ、これって「ファイアーエムブレム自体をテーマにしたファイアーエムブレム」なんだなって・・・

 

おわりに

とつらつら書いたが、多分この作品の魅力というか、この作品で伝えたかったことって少ない人にしか伝わらないと思う。
だって、ファイアーエムブレムを覚醒以前に購入してたプレイヤーって20万人とかそれくらいなのだもの。
海外展開される前の作品に関しては全世界で30万人とかそんなもの。

これに対して現在ファイアーエムブレム風花雪月は全世界で382万本。
そういう意味で言えば、本作は「380万人中30万人にしか全量伝わらない(気が付ける人はもっと少ない)」物語を描いてしまった」ということだ。

ただ、歴代作品をやっていなくとも、システムは歴代最高峰。
手ごわいシミュレーションも手軽なシミュレーションも、求めた難易度を自分で選べるし、初見プレイでのんびりやっても30時間~40時間。
掘り下げまですべてやるなら200時間は固い。
単純明快なストーリーは細かい点を気にしなければテンポも良く、ノリと勢いから成るメリハリのあるストーリーは童心を思い出せてくれる良作だ。

否定的な意見も上述の理由から多くなるよな・・・という一方「この物語を十二分に楽しめた数少ないファン」であることを誇りに思ってこの記事を締めたいと思う。


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